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うずひこ
管理人
高校生の時から35年間、映像作品を観続けている50代のVODパートナー 。VODの登場で視聴が加速し、近年は平均800時間、多い年には1,000時間を超えることも。
元・映画監督である妻との対話をヒントに、「この作品は、どんな人が楽しめるか?」を紐解きながら、あなたと作品の素敵な出会いを応援しています 。
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Netflix日本上陸10年の軌跡。作品で振り返る「日本オリジナル」の凄まじい進化

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うずひこ

ねえ、今度のブログ記事、Netflixが日本に来て10年っていう特集を書いてるんだ

ふーん、10年。それで? ただ作品が並んでるだけのカタログ記事なら、こっちは時間を無駄にしたくないんだけど

うずひこ

いや、それが全然違うんだよ! この10年って、単に作品が増えただけじゃなくて、Netflixの『戦略』自体が凄まじく“進化”してるんだ。それこそが、今の日本の映像業界を変えたっていう話で…

ほう、『戦略』ね。面白いじゃない。最初の頃の『火花』みたいな高品質ドラマから、どうやって今の『アリス』みたいな世界的なヒットや、『匿名の恋人たち』みたいな日韓ハイブリッド作品を生み出すまでに至ったのか。その“軌跡”がちゃんと分析できてるんでしょうね?

うずひこ

もちろん! その変遷こそが今回のテーマだからね

いいわ。そこまで言うなら、わたしを満足させてみなさい。評価してあげるわ

今回も、ウチの“世界で一番厳しい審査員”を唸らせるべく、「Netflix日本上陸10年の軌跡」をテーマにお届けします。

私たち夫婦が『決断』をテーマに議論した、こちらの処方箋記事もあわせてどうぞ。

この10年間、Netflixは単なる「海外の配信プラットフォーム」から、日本の映像制作のあり方そのものを変革する「メガ・プロデューサー」へと劇的な進化を遂げました

この記事では、単に作品を紹介するのではなく、Netflixの戦略がどのように進化してきたのかを、象徴的な作品と共に「4つのフェーズ」で振り返っていきます。

なぜ彼らは、わずか10年で日本のトップクリエイターたちを惹きつけ、世界基準のヒット作を連発できるようになったのか? その秘密に迫ります。

Netflixの料金プランや基本的なサービス内容については、こちらの解説記事をご覧ください。
Netflix徹底解説!料金、作品、機能を完全ガイド!

目次

フェーズ1 (2015-2018): 「信頼」の獲得 — 『火花』という狼煙

Netflixが2015年に日本市場に参入した当時、市場は国内のテレビ局と既存のレンタル市場が強固な地位を占めていました。この成熟し、閉じた市場に参入するためにNetflixが放った最初の一手は、極めて巧妙かつ戦略的なものでした。

象徴的作品:『火花』 (2016)

出典:netflix.com

2016年6月3日に全世界配信を開始した『火花』は、Netflixが日本で制作した最初の本格的なオリジナルドラマです。

【作品概要】

又吉直樹さんによる「芥川賞」受賞作という、日本国内で最も権威ある文学賞を冠した作品。テーマは「売れない芸人」の苦悩と才能をめぐる師弟関係という、非常にドメスティック(国内的)なものです。

【深掘り】なぜ『火花』は「事件」だったのか?

この作品の本当の凄さは、ドラマの出来栄え以上に、その「戦略性」にあります。これには二重の目的がありました。

戦略①:「プレステージ・プレイ」によるブランド確立

Netflixは、芥川賞という日本の「権威」を、従来のテレビドラマとは比較にならない規模(全10話)と予算で映像化しました。

これは、「我々は単なる動画配信サービスではない。高品質で文化的なコンテンツの新たな担い手である」と、国内の知識層や高感度な視聴者層にアピールし、ブランドの「正当性(レジティマシー)」を確立するための、見事な「プレステージ・プレイ(権威付け戦略)」でした。

当時の日本の映像業界では考えられなかった、潤沢な予算と尺、そして表現の制約に捉われない自由な制作環境。これを「芥川賞」という最も権威あるIPで実行したことが、Netflixの「本気度」を業界内外に示す何よりの証拠となりました。

戦略②:「世界190ヵ国同時配信」というクリエイターへの誘い

もう一つの驚きは、この極めて国内的なテーマの作品を、Netflixが「世界190ヵ国同時配信」としてグローバルに展開した点です。

これは、日本のクリエイターや制作業界に対し、「Netflixと組めば、国内市場の論理に留まらず、世界に挑戦できる」という、それまで不可能であった規模の野心を提示する強烈なメッセージとなりました。「笑いとは何か」「生きるとは何か」という普遍的なテーマを強調することで、国内の権威獲得とグローバルな野心の提示という、初期の戦略的方向性を明確に示したのです。

Netflixのテッド・サランドスCCO(当時)が「『火花』は世界中で観られている」と発言した通り、この作品はNetflix Japanの「火花」モデル=高付加価値化戦略を確立したのです。

ただし、このフェーズ1の段階では、『火花』は批評的な成功を収めたものの、グローバルな文化的影響力を持つ「メガヒット」を生み出すには至りませんでした。Netflixはまだ、日本の強固な制作業界との関係性を構築し、市場を学習する段階にあったのです。

フェーズ2 (2019-2022): 「業界の破壊」と「グローバル・フランチャイズ」の確立

2019年頃から、Netflixジャパンの戦略は明確な第二フェーズに移行します。

それは、単なる「高品質なコンテンツ」の提供者から、日本の映像業界の構造そのものに挑戦する「ディスラプター(破壊者)」としての役割です。

このフェーズでは、戦略が明確に「二極化」します。

  1. 国内市場での「熱狂」:日本の「しがらみ」を破壊するスキャンダラスな作品。
  2. グローバル市場での「勝利」:世界で売れる「方程式」を確立するジャンル作品。

それぞれを象徴する、2つの「事件」を見ていきましょう。

ケーススタディ1:『全裸監督』 (2019) — 日本の「しがらみ」の打破

出典:netflix.com
【作品概要】

1980年代のAV業界の黎明期と、「AVの帝王」村西とおるの半生を描いた、山田孝之さん主演作。シーズン1(2019年8月8日配信)、シーズン2(2021年6月24日配信)ともに、そのスキャンダラスな内容で、国内で社会現象を巻き起こしました。

【深掘り】なぜ『全裸監督』は「事件」だったのか?

この作品の衝撃は、題材のスキャンダラスさだけではありません。

この作品の真の功績は、日本の映像業界が長年抱えてきた「しがらみ」を、その制作手法によって破壊したことにあります。

日本の「しがらみ」とは?

従来の日本の映像業界、特にテレビドラマは、大きく二つの「しがらみ」に強く縛られてきました。

  1. スポンサーと放送コード: スポンサーの意向や、地上波の放送コードに抵触するような過激な表現やタブーな題材は、企画の段階で排除されます。
  2. 制作委員会システム: 映画やドラマを作る際、複数の企業が出資してリスクを分散する日本独自のシステム。リスクを減らせる反面、「どの出資者もOKを出す、当たり障りのない企画」しか通りにくくなる側面も持ちます。

『全裸監督』が描く題材は、この「しがらみ」の下では企画の実現自体が不可能でした。

なぜNetflixは作れたのか?

答えは、彼らが「日本のしがらみ」の外にいる存在だったからです。

Netflixの収益源は、世界中の視聴者からの「サブスクリプション(月額料金)」であり、国内のスポンサーや放送コードを気にする必要がありません。

Netflixは、この「しがらみフリー」の立場で、このハイリスクな企画に「バクチ(賭け)」として潤沢な予算を投下しました。ハリウッド水準のポストプロダクション(カラリストによる色調整など)を導入。さらに、映画の3倍以上にもなる尺を投入したのです。
これは、当時の日本の“ギョーカイ作法”から完全に解き放たれた作品の誕生でした。

「Netflixモデル」の提示

この「賭け」は成功しました。

作品は、単なる暴露的な伝記ドラマに留まらず、AV業界の「負の側面」や「搾取の構造」(例:転落していく女優のシビアな描写)にも踏み込む批評的な視点を持っていました。結果、批評家からも高い評価を獲得し(映画.comのレビューでは88%が4.0点以上を付与*2025年11月時点)、社会現象を巻き起こしたのです。

『全裸監督』の真の功績は、日本のクリエイターに対し、「スポンサーや放送コードを気にせず、潤沢な予算で、世界水準の作品を創れる」という「Netflixモデル」を、何より雄弁な実例として強烈に提示したことにあるのです。

『全裸監督』と並ぶ「熱狂」枠 — 『サンクチュアリ -聖域-』

『全裸監督』がAV業界という「タブー」への挑戦だったとすれば、2023年に配信された『サンクチュアリ -聖域-』は、大相撲という日本の「聖域」に切り込んだ作品です。

相撲という伝統文化を、ここまで生々しく、エンターテインメントとして描き切った熱量に圧倒されました。これもまた、地上波では難しかった企画でしょう。『全裸監督』と並ぶ、ネトフリの「熱狂」枠の代表格と言えます。

ケーススタディ2:『今際の国のアリス』 (2020-) — グローバル・フランチャイズの創出

出典:netflix.com

『全裸監督』が「国内のしがらみ」を打破した作品だとすれば、こちらはNetflixジャパンが「持続可能なグローバル・フランチャイズ」を確立した、戦略上、最大のターニングポイントです。

【作品概要】

山﨑賢人さんと土屋太鳳さんがW主演を務めるサバイバル・アクション。原作は麻生羽呂氏による人気マンガで、日本が得意とする「デスゲーム」ジャンルの作品です。シーズン1は2020年12月10日に配信されました。

【深掘り】なぜ『アリス』は「最大の転換点」なのか?

この作品の真価は、VFXの凄さ(誰もいない渋谷のスクランブル交差点!)だけではありません。Netflixジャパンが「世界で勝つための方程式」を初めて確立した、戦略的に極めて重要な作品だからです。

「勝利の方程式」の確立

『全裸監督』は国内で社会現象を起こしましたが、そのテーマ性からグローバルなメガヒットとまではいきませんでした。

そこでNetflixが打ち立てた次なる戦略が、この『アリス』です。その「勝利の方程式」とは、以下の組み合わせでした。

  1. 日本が誇る「潤沢なマンガ原作IP」
  2. 言葉の壁を超える「世界水準のVFX」と「ハイコンセプトな(分かりやすい)ジャンル」

この方程式は見事にハマりました。

シーズン1(2020年)は世界的なヒットを記録。2022年12月22日のシーズン2ではその規模をさらに拡大させ、「世界90以上の国と地域でTOP10入り」という大ヒットを記録したのです。

海外の熱狂的なファンダム

海外のSNS(Reddit)上では、韓国のメガヒット作『イカゲーム』との比較が頻繁に行われています。

『アリス』は『イカゲーム』がいつもなりたかったものだ」 といった、原作マンガ由来のゲームの巧妙さやキャラクター造形を高く評価する声も多く、熱狂的なファンダムが形成されていることが確認できます。

「資産(フランチャイズ)」としての真価

そして、このIPの本当の凄さが証明されたのは、シーズン3のヒット時(2025年9月25日配信)です。

制作会社THE SEVENの発表によれば、シーズン3の世界的な大ヒット(非英語シリーズ部門で全世界1位)を受け、なんとシーズン1とシーズン2も再び注目を集め、「3作同時にTOP10入り」するという、日本の実写作品として新たな歴史を刻む快挙を成し遂げたのです。

これは、『アリス』が「一発屋」のヒットではなく、新作が配信されるたびに過去作の視聴(イッキ見)をも牽引する、持続可能な「資産(フランチャイズ)」として機能していることの証明です。

Netflixは、この強力な「エンジン」を手に入れ、解約率を下げ、新規加入者を呼び込み続ける「勝利の方程式」を確立したのです。

フェーズ3 (2023-2024): 「IP大型予算化」と「二正面作戦」

『アリス』の成功を受け、2023年以降、Netflixの戦略はさらに洗練されます。

「世界的に著名な日本IPの大型実写化」と「批評家筋に響く高品質な国内向けオリジナル」の「二正面作戦」が展開されるのです。

戦略A:グローバルIP戦略(アリスの方程式の横展開)

『今際の国のアリス』の成功体験を、より大規模な、あるいは異なるジャンルのIPで再現する戦略です。

象徴的作品:『幽☆遊☆白書』 (2023)
出典:netflix.com

2023年12月14日に配信された『幽☆遊☆白書』。これは、『アリス』の成功方程式を、より世界的に有名なIP(冨樫義博氏原作)で再現したものです。

配信が開始されると、特に原作ファンからはその大胆なストーリー構成やキャラクター解釈をめぐり、賛否両論が巻き起こりました。

しかし、Netflixの「戦略」という視点で見れば、この作品は紛れもない「大成功」でした。本作は配信開始後、「日本発作品としては過去最高となるグローバル大ヒットスタート」を記録したのです。

賛否両論を巻き起こすほどの注目度と、それを上回る視聴者数を世界中で叩き出したという「事実」が、Netflixの戦略の正しさを証明しました。

象徴的作品:『シティーハンター』 (2024)
出典:netflix.com

2024年4月25日に配信された、鈴木亮平さん主演の『シティーハンター』も、この「グローバルIP戦略」の流れを汲む作品です。アジア・アカデミー・クリエイティブ・アワードで鈴木亮平さんが受賞するなど、批評的にも成功を収めています。

戦略B:国内プレステージ戦略(クリエイター主導)

一方で、IP依存ではない、クリエイター主導の高品質なオリジナル企画も同時に展開されました。これはフェーズ1の『火花』の戦略を、よりスケールアップさせたものと言えます。

象徴的作品:『忍びの家 House of Ninjas』 (2024)
出典:netflix.com

2024年2月15日に配信された本作は、「現代に“忍び”がいたら?」という、賀来賢人さんが原案・主演を務めた企画がグローバルに成功した特筆すべき事例です。

『全裸監督』や『サンクチュアリ』とはまた違うベクトルで、「これも日本のテレビじゃ無理だったろうな…」と唸らされる、クリエイターの熱意が結実した作品です。

象徴的作品:『地面師たち』 (2024)
出典:netflix.com

2024年7月25日に配信された、実際の詐欺事件をモデルにした社会派ドラマ。

(※新庄耕さんの優れた原作小説がありますが)「芥川賞」や「幽☆遊☆白書」のような超有名IPの知名度に頼るのではなく、強烈な「題材」と「クリエイターの力」(大根仁監督)で、国内で社会現象的な大ヒットを生み出しました。

配信後SNSで大きな反響を呼び、国内ランキングで5日連続1位を獲得するなど、IP頼みではない企画が国内で強い社会的インパクトを与えたという点に、Netflixの戦略の深みを感じます。

フェーズ4 (2025~): 「戦略的ポートフォリオ」の成熟

そして2025年。Netflix Japanの戦略は、これまでの10年間の学習を経て、フェーズ3の「二正面作戦」をさらに進化させた「戦略的ポートフォリオの成熟期」に入りました。

日本のコンテンツ責任者が「これまで以上に熱く、これまで以上にユニークで、これまで以上にワクワクする年になりそうだ」と宣言した通り、2025年のラインナップは「激増」しています。

しかし、これはやみくもな物量投入ではありません。リスクとリターンを計算した、高度な「4つの戦略的ピラー(柱)」によって構成されているのです。

2025年戦略ピラー①:フランチャイズの最大化

出典:netflix.com

これはポートフォリオの「アンカー(錨)」です。

最も予測可能で高いリターンが見込める投資であり、S3の配信がS1、S2の視聴をも牽引するため、投資効率が極めて高いのが特徴です。

  • 象徴的作品:『今際の国のアリス』シーズン3 (2025年9月25日)

2025年戦略ピラー②:グローバル市場向け大型ジャンル作品

出典:netflix.com

『アリス』の成功フォーマット(ハイコンセプト+ハイクオリティVFX+日本的要素)を、他のジャンルで水平展開する戦略です。言語や文化の壁を越えやすい「アクション」「サスペンス」「デスゲーム」といったジャンルに属します。

  • 象徴的作品:『新幹線大爆破』 (2025年4月23日)
    • 草なぎ剛さん主演、樋口真嗣監督による、1975年の名作パニック・サスペンスのリブート。これも世界市場を意識した大型ジャンル作品です。
  • 象徴的作品:『イクサガミ』 (2025年11月13日)
    • 岡田准一さんが主演・プロデューサー・アクション設計まで務める、「時代劇」と「デスゲーム」を融合させた超大型企画。「“命をかけた 侍たちの遊戯”」と銘打たれた本作は、2025年最大級のオリジナル作品と言えるでしょう。

2025年戦略ピラー③:国内・アジア市場向けスター主導ドラマ

出典:netflix.com

国内市場での「会員維持(リテンション)」を強く意識しつつ、同時にアジア全域(リージョナル)の市場も狙う、効率的な「クロスボーダー戦略」です。

  • 象徴的作品:『グラスハート』 (2025年7月31日)
    • 佐藤健さんが主演・共同エグゼクティブプロデューサーを務め、野田洋次郎(RADWIMPS)が音楽を手掛ける青春音楽劇。国内スター主導の典型です。
  • 象徴的作品:『匿名の恋人たち』 (2025年10月20日)
    • 小栗旬さんと、韓国のトップ女優ハン・ヒョジュさんが共演するロマンティック・コメディ。
  • 象徴的作品:『ソウルメイト』 (2025年8月)
    • 磯村勇斗さんと、韓国のトップスター、オク・テギョン(2PM)さんがW主演する日韓ロマンス。

この2作品に見られるように、日韓のトップスターを意図的にキャスティングすることで、両国のファン層に同時にアピールし、アジア市場における覇権を確実なものにしようという意図が明確です。

2025年戦略ピラー④:ニッチ・コミュニティの開拓

出典:netflix.com

メガヒットだけを追うのではなく、特定のコミュニティを確実に満足させることで、高いエンゲージメントと低い解約率を生み出す「ロングテール戦略」です。

  • 象徴的作品:『10DANCE』 (2025年12月18日)
    • 竹内涼真さんと町田啓太さんがW主演する、競技ダンスとBL(ボーイズラブ)を組み合わせた作品。BLは全世界に熱狂的なファンコミュニティが存在するため、極めて戦略的な投資です。

アジア連携の「光」と「影」?

フェーズ4の柱の一つである「日韓ハイブリッド」戦略。

10月に配信された『匿名の恋人たち』は、小栗旬さんとハン・ヒョジュさんの共演が話題となり、アジア市場を狙う明確な一手として機能しています。

一方で、気になるのが『ソウルメイト』です。

磯村勇斗さんとオク・テギョン(2PM)W主演という、もう一つの戦略の柱として発表されました。

しかし、当初2025年8月配信予定とされていましたが、(2025年11月17日時点)まだ配信は開始されていません。戦略の柱のはずが、理由も不明なまま「疑惑の作品」になっています。

皆さんは、この状況をどう思われますか?

総括:なぜNetflixは10年で日本の「制作体制」を変えられたのか

この10年の軌跡は、Netflixが単なる「配信プラットフォーム」や「作品の買い手」から、日本のエンターテインメント業界の構造そのものを変革する「エコシステム・ビルダー(構築者)」へと変貌を遂げたプロセスでした。

では、どうやって彼らはそれを成し遂げたのでしょうか?

その答えは、Netflixが日本のトップクリエイターや制作会社に提供した「2つの報酬」にあります。

報酬①:「共進化」モデルによる制作インフラの構築

Netflixは、日本のレガシーメディア(既存のテレビ局など)を「破壊」するだけではありませんでした。彼らを「アップグレード」させ、自らのパートナーとする「共進化」の道を選びました。

その象徴が、株式会社THE SEVENとの関係です。

THE SEVENは、なんと日本の民放キー局であるTBSホールディングスが、Netflixのような「グローバル配信プラットフォームと連携」し、「全世界に向けたハイエンドなコンテンツ」を制作するために2022年1月に設立した会社なのです。

Netflixの最重要作品である『今際の国のアリス』S3や『幽☆遊☆白書』の制作を担っているのが、まさにこのTHE SEVENです。

Netflixは、日本のテレビ局に「我々の『世界水準』の要求に応えるための新しい組織を作りなさい」と促し、設立させた。そして、その組織に自社の最重要作品を発注する。

この「共進化」モデルにより、Netflixは日本の制作インフラ自体を「アップグレード」させ、自社の高品質なコンテンツ・パイプラインを長期的に確保するという、極めて高度なエコシステム戦略を完成させたのです。

こうした「映画の作り方」という点では、監督が「音」に込めた意図を解説した、こちらの記事もおすすめです。
物語を「音」で選ぶ、新しい映画体験ガイド

報酬②:「予算」と「グローバルな名声」の好循環

Netflixがトップクリエイターに提供するものは、潤沢な「予算」だけではありません。

それは、「グローバルな名声(アワード)」です。

Netflixは、冲方丁氏やヤマザキマリ氏といった日本を代表するクリエイター6名と直接パートナーシップを締結しています。

彼らがNetflixと組む動機は「世界」です。クリエイター自身が「世界中の人々に楽しんでもらえることを目標に」「世界での反応が今から楽しみ」とコメントしている通りです。

そして、Netflixはその「名声」を、結果として提供します。

グローバル全体で、Netflixはエミー賞のノミネート数で長年の強豪HBOを凌駕する存在となっています。

日本作品も例外ではありません。アニメ『ONI ~ 神々山のおなり』がエミー賞で複数部門を受賞したほか、『シティーハンター』や『幽☆遊☆白書』もアジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードで受賞しています。

「Netflixと組めば、世界的なアワード(名声)を獲得できる」

この事実が、日本のトップタレントに対し強力なインセンティブとして機能します。

これが「潤沢な予算」と「グローバルな名声」の好循環を生み出し、日本のトップタレントがNetflixのオリジナル作品に集結する最大の原動力となっているのです。

【厳選】Netflix日本オリジナル実写作品 マスターリスト(2015-2025)

出典:about.netflix.com

この10年の軌跡を彩った、主な日本制作のオリジナル実写作品(映画・ドラマ)を、時系列のマスターリストとしてご紹介します。

あなたの「観たい!」作品を探す参考にしてください。
このリストは2025年11月時点の主な作品をまとめたものです。

配信年配信日日本語タイトル種別主要キャスト / 特記事項
20166月3日火花シリーズ芥川賞原作。日本オリジナルドラマの黎明期を築いた作品
20198月8日全裸監督 (シーズン1)シリーズ山田孝之 主演。国内で社会現象化
202012月10日今際の国のアリス (シーズン1)シリーズ山崎賢人, 土屋太鳳 W主演。グローバルヒットの確立
20216月24日全裸監督 (シーズン2)シリーズ山田孝之 主演。シーズン1の成功を受け制作
202212月22日今際の国のアリス (シーズン2)シリーズ山崎賢人, 土屋太鳳 W主演。シーズン1を上回る規模で制作
20231月12日舞妓さんちのまかないさんシリーズ是枝裕和が総合演出。京都の花街を舞台にした作品
20232月23日ちひろさん映画有村架純 主演。元風俗嬢の女性の生き様を描く
20235月4日サンクチュアリ -聖域-シリーズ大相撲の世界を舞台にした作品
20236月1日THE DAYSシリーズ福島第一原子力発電所事故を描く
202312月14日幽☆遊☆白書シリーズ大型IP実写化。グローバル戦略の本格化
20242月15日忍びの家 House of Ninjasシリーズ賀来賢人 原案・主演。クリエイター主導のオリジナルヒット
20242月29日パレード映画長澤まさみ 主演、藤井道人 監督。遺された人への想いを描く
20244月25日シティーハンター映画鈴木亮平 主演。大型IP実写映画化
20247月25日地面師たちシリーズ実際の事件がモデル。国内で高い評価と社会的影響
20248月29日恋愛バトルロワイヤルシリーズ男女交際禁止の高校を舞台にした学園ドラマ
20249月19日極悪女王シリーズ2024年ラインナップの注目作
202411月14日さよならのつづきシリーズ有村架純、坂口健太郎 出演
20251月9日阿修羅のごとくシリーズ2025年ラインナップの先陣を切る作品
20252月27日Demon City 鬼ゴロシ映画生田斗真 主演。バイオレンスアクション
20254月23日新幹線大爆破映画草なぎ剛 主演, 樋口真嗣 監督。1975年作のリブート
20257月31日グラスハートシリーズ佐藤健 主演・共同プロデュース。野田洋次郎 音楽
2025未定ソウルメイトシリーズ磯村勇斗, オク・テギョン W主演。日韓ハイブリッド戦略作品
20259月25日今際の国のアリス (シーズン3)シリーズ山崎賢人, 土屋太鳳 W主演。メガヒットシリーズの続編
202510月20日匿名の恋人たちシリーズ小栗旬, ハン・ヒョジュ 共演。日韓ハイブリッド戦略作品
202511月13日イクサガミシリーズ岡田准一 主演・プロデューサー。2025年最大級のオリジナル時代劇
202512月18日10DANCE映画竹内涼真, 町田啓太 W主演。人気BL漫画の実写化

おわりに:あなたの「今夜の一本」と「次」のVOD

さて、Netflix日本10年の軌跡を、戦略の進化という視点で深掘りしてきました。

『火花』という一本の「狼煙」から始まった物語が、今やアジア全域を巻き込み、日本の制作エコシステム自体を変革するまでに至ったことがお分かりいただけたかと思います。

今回は【Netflix日本10年】をテーマにお届けしましたが、皆さんの感想はいかがでしたか?

「あの作品の裏にそんな戦略があったのか」と、少しでも新しい発見があり、皆さんのVODライフがより豊かになるお手伝いができていれば、これほど嬉しいことはありません。

Netflixと他のVODサービスを徹底的に比較した記事はこちらです。
動画配信サービス主要15社、徹底比較で白黒つけます!

このブログでは、これからもあなたのVOD選びのパートナーとして、様々な角度から有益な情報をお届けしていきます。

うずひこ

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