追悼 ロバート・レッドフォード:『明日に向って撃て!』で輝いた、アメリカ映画の”黄金のアウトロー”
2025年9月16日、映画界は本当に大きな星を失いました。ロバート・レッドフォード、年齢89歳。この訃報に接し、一人の映画ファンとして、彼の功績を正しく、深く伝える記事を書かねばならないと感じました。なぜなら、彼のフィルモグラフィはあまりに豊かで、どこから観ればその本質に触れられるのか、戸惑う方も少なくないからです。
「時間を無駄にしたくない」「どうせ観るなら本物を」。それが私の信条です。今回は、私の35年の視聴経験の全てを注ぎ込み、ロバート・レッドフォードという俳優が、なぜ単なる「二枚目スター」ではなく、アメリカ映画史における「本物」たり得たのか。今は亡き彼を偲び、その色褪せることのない価値に迫ります。
若き日の輝きとスターダムへの道:『明日に向って撃て!』が変えたもの
ロバート・レッドフォードの若い頃の魅力を分析すると、それは単なる容姿の美しさではありません。あの時代の空気、反骨精神とロマンチシズムが奇跡的に融合した「時代の精神」そのものを体現していた点にこそ価値があります。
その象徴が、1969年の『明日に向って撃て!』。ポール・ニューマンと組んだこの作品で、彼はサンダンス・キッドというアメリカン・ニューシネマを代表する役柄を掴み取りました。この作品は全世界で1億ドル以上の興行収入を記録し、彼は英国アカデミー賞主演男優賞を受賞。一気に国際的なスターへと駆け上がります。
そして1973年、彼はキャリアの頂点を迎えます。バーブラ・ストライサンドとの悲恋を描いた『追憶』、そして再びポール・ニューマンと組んだ『スティング』は、その年最大のヒット作となりました。『スティング』での小粋な詐欺師役は、彼に唯一のアカデミー賞主演男優賞ノミネートをもたらし、そのスター性を不動のものにしたのです。
伝説の共演者たち:ブラッド・ピットも憧れた「受けの美学」
レッドフォードの魅力を語る上で、伝説的な共演者たちとの化学反応は欠かせません。
- ポール・ニューマン: 彼とのパートナーシップは、映画史上最も偉大なものの一つです。スクリーン上での完璧なコンビネーションは、実生活での生涯にわたる友情の反映でした。互いに手の込んだ悪戯を仕掛け合うほどの親密な仲であり、その絆は映画ファンにとって永遠の伝説です。

- ブラッド・ピット: 後年、しばしば「若い頃のレッドフォードに生き写しだ」と評されたブラッド・ピットとも、『スパイ・ゲーム』(2001年)などで共演しました。世代を超えた2人のスターの共演は、レッドフォードの輝きが次世代へと受け継がれていることを象徴するかのようでした。

他にも、バーブラ・ストライサンドやダスティン・ホフマン、ジェーン・フォンダといった錚々たる顔ぶれと共演し、数々の名作を生み出しました。

カメラの裏側の才能:監督としての非凡な視点

俳優としてのレッドフォードも素晴らしいですが、映画の本質を深く理解するなら、監督としての彼を見過ごすことはできません。
1980年代、彼は監督業に本格的に進出。初監督作品『普通の人々』で、いきなりアカデミー賞の監督賞と作品賞をダブル受賞するという快挙を成し遂げます。
彼が俳優として演じたヒーロー像とは対照的に、彼の監督作は、完璧に見える家族の中に潜む痛みや社会の欺瞞といった、複雑なテーマを執拗に描き出しました。この成功は、彼が観客に心地よい夢を見せるだけでなく、厳しい現実を突きつける力を持った、真の映画作家であることを証明したのです。
スクリーンを超えた遺産:サンダンスという「革命」

彼の後世への最も大きな影響は、間違いなく1981年に設立したサンダンス・インスティテュートでしょう。
商業主義に傾くハリウッドを見て、彼は独立したアーティストを支援するためにこの組織を立ち上げました。サンダンス映画祭は、今や世界で最も重要なインディペンデント映画の祭典となり、クエンティン・タランティーノやスティーブン・ソダーバーグといった数え切れない才能を世に送り出してきました。
これは、ハリウッドのシステムの内側から、その外側にいる才能たちのための「生態系」を創り上げた、静かなる革命でした。
晩年と『最後の映画』

キャリアの晩年も、彼の挑戦は続きました。『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』(2013年)では、ほぼ台詞のない一人芝居という難役を演じきり、批評家からキャリア最高級の賛辞を受けます。さらに、マーベル映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)への出演は、若い世代の観客をも驚かせました。
そして2018年、彼は『さらば愛しきアウトロー』を『最後の映画』として俳優業からの引退を表明。その作品は、彼の長く輝かしいキャリアを締めくくるにふさわしい、哀愁と気品に満ちた感動的なフィナーレとなりました。
未来に語り継ぎたい、ロバート・レッドフォード珠玉の名作ベスト10
彼の膨大なフィルモグラフィの中から、「これを観ておけば間違いない」と断言できる10本を厳選してご紹介します。興行収入や批評的評価に加え、「今観ても面白いか」「彼の本質が表れているか」という視点で選びました。
※動画配信サービスの情報は2025年9月17日現在のものです。最新の配信状況は各公式サイトでご確認ください。
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1位『スティング』 (1973年)
アカデミー賞作品賞受賞作。再びニューマンと組み、大恐慌時代のシカゴを舞台に、詐欺師たちが繰り広げる痛快なコンゲームを描く。レッドフォードの軽妙洒脱な魅力が全開。
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2位『明日に向って撃て!』 (1969年)
アメリカン・ニューシネマの象徴的作品。ポール・ニューマンとの伝説的なコンビで、実在した銀行強盗の逃避行をロマンとユーモアたっぷりに描く。
【見放題で視聴可能な主な動画配信サービス】主要な動画配信サービスでは見放題の対象になっていないようです。
『明日に向って撃て!』を彷彿とさせるラストシーンにファンが歓喜した、ジョン・ワッツ監督の「ウルフズ」。現代のポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードとも評されるジョージ・クルーニーとブラッド・ピットがタッグを組んだクライム映画です。話題の結末を、ぜひその目でお確かめください!
▶映画『ウルフズ』感想レビュー!クルーニーとブラピ演じるフィクサーの評価
3位『大統領の陰謀』 (1976年)
ウォーターゲート事件を暴いた2人の新聞記者を、ダスティン・ホフマンと共に演じた社会派サスペンスの金字塔。腐敗した権力に立ち向かう彼の誠実なヒーロー像は、時代の要請そのものでした。
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4位『普通の人々』 (1980年)
監督デビュー作にしてアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞。ある家族の崩壊と再生を静かながらも鋭い視点で描き、彼の監督としての非凡な才能を示した。
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5位『追憶』 (1973年)
バーブラ・ストライサンドと共演した、映画史に残る悲恋物語。政治思想も性格も正反対の男女の、数十年にもわたる愛の軌跡が切なく描かれます。
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6位『候補者ビル・マッケイ』 (1972年)
理想主義的な若者が選挙戦の中でいかに変貌していくかを描いた、鋭い政治風刺ドラマ。レッドフォードの知的なイメージを決定づけた一作。
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7位『愛と哀しみの果て』 (1985年)
アカデミー賞作品賞受賞。メリル・ストリープと共演し、20世紀初頭のアフリカを舞台に、壮大な愛と人生を描いたロマンス大作。
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8位『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』 (2013年)
単独航海中に遭難した男の絶望的なサバイバルを描く。ほぼ台詞のない圧巻の一人芝居で、俳優としての健在ぶりを世界に証明しました。
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9位『クイズ・ショウ』 (1994年)
監督として再びアカデミー賞にノミネート。1950年代に実際に起きたテレビ番組のやらせスキャンダルを題材に、メディアの倫理と大衆の欲望を鋭く問うた傑作。
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10位『さらば愛しきアウトロー』 (2018年)
俳優としての引退作。70歳を超えても銀行強盗と脱獄を繰り返した実在の人物を、チャーミングかつ哀愁たっぷりに演じ、そのキャリアを見事に締めくくりました。
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まとめ

ロバート・レッドフォードは、ハリウッドの黄金時代が生んだ最後の偉大なスターの一人でありながら、同時にそのシステムに依存しない新たな道を切り開いた先駆者でした。彼は究極のインサイダーでありながら、究極のアウトサイダーの擁護者でもあったのです。
俳優として、監督として、そしてサンダンスの創設者として、彼がアメリカ文化に残した「消えることのない印」は、計り知れません。もしあなたが彼の作品に触れたことがないのなら、それは映画の豊かさの大部分をまだ知らないのと同じことです。まずはこのリストから、あなたの時間を投資する価値のある一本を見つけてみてください。

安らかにお眠りください、永遠のサンダンス・キッド。あなたの輝きは、これからもスクリーンの中で生き続けます。
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